恐ろしい話だが、警察不祥事ももう不感症段階である。警察が「市民の安全」「犯罪の防止と摘発」を第一の行動原理としていると信じている人は、日本にはもはや誰もいないだろう。優先順位としては、「組織のメンツを守る」と1番目として、せいぜい8番目か9番目、「よほど暇ならやってあげてもいい事項」だ。
本書は、日産社員が同僚を含む3人組の不良に拉致監禁され、両親が16回も警察に足を運んで捜査を懇願したにもかかわらず無視され惨殺された事件のリポート。著者は単なる怠慢ではない、「絶対に捜査しない」という栃木県警の強い意志の背景を探る。一般には主犯が警察官の息子であるためと思われているが、ここでは不祥事の露呈を恐れる日産自動車が県警に強い圧力をかけたという推理が成される。
この推理には直接的証拠はない。だが、本書を読んだ人間は百人が百人、「それ以外にまったく説明がつかない」ということに納得するだろう。そして百人が百人、今後は同社のロゴマークを忌まわしい、血塗られたものとして目に映ずるに違いない。過去「○○事件」として社名が歴史に刻まれた企業不祥事は少なくない。が、どれひとつとっても、おぞましさ、悪質さではこの事件の非ではないだろう。何しろ未だに被害者を諭旨免職処分にしたまま取り消そうともせず恥じないのである。解散して霊に詫びよ、と言いたい。この会社は存続する価値は寸毫もない。