キャッシュカードがあぶない
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人気ランキング : 142,621位
定価 : ¥ 1,000
販売元 : 文藝春秋
発売日 : 2004-12 |
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私はキャッシュカードを持たないことに決めました |
ノンフィクションのオーソリティーの柳田邦男による、キャッシュカード偽造犯罪に関するレポート。
柳田の知人、鈴木富夫氏は、2004年3月、偽造キャッシュカードによるATMからの現金引き出しで、3226万9630円を失った。
このことをきっかけに、キャッシュカードの偽造被害に関する取材を始めた柳田は、ほとんど報道されていないにもかかわらず、実は、多くの同様の被害者がいることを知る。
取材を元に、背後に潜む、銀行、警察、金融行政の構造的な問題点、ひいては、高度情報化社会を標榜しながら、セキュリティー対策に関しては欧米にくらべ余りにもお粗末な日本の社会の状況をあぶりだす洞察力は、これまでも「脳死」や「医療事故」の問題に取り組んできた著者ならではのものである。
文章や構成も読みやすく、1時間ほどで一気に読んでしまった。
残念な点は、我々一般市民はどのような対策を取ればよいのかが示されていないことである。
私は、この本を読んで、キャッシュカードを廃止することを決断した。
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槍玉の先にあるものを考えたい |
柳田邦男も随分特殊な問題を取り上げたなあと思って読み始めたが、とても説得力があるし、かなり本質的な問題を提起している。「キャッシュカード被害者たちは、・・・40年前の公害被害者たちと同じような状況に置かれている」という指摘は、鋭い。
槍玉にあげられているのは、
1 まずは、銀行。情報を隠し、責任を消費者(の注意)に転嫁し、規制にも業界をあげて潰してきた。
2 次に、警察。被害者を救済するばかりではなく、やっかいもの扱いをして、泣き寝入りさせたり、言葉で傷つけたり、証拠を残す対策をとらず放置した。
3 金融庁。外国で消費者保護のための規制があることを知っていながら、銀行の反発を受けてたなざらしにした。
4 裁判所。形式的な法解釈により、真の被害者の救済ができなかった。
5 国会。何もしてこなかった。
しかしだ。さらに、何故こんなことになったのかを考えたい。単に、銀行などを槍玉にあげて済む問題ではない。
一つには、日本が安全だ(とみんな思っている)からだ。外国(途上国)を含む)で、カードに関する規制が進んでいるのは、カード犯罪が常識だからだ。別に、日本が遅れているからではない。
それと、妙な平等主義、大衆主義がある。銀行だって馬鹿でないから、カード詐欺に備えて預金者から保険料をとりたいのだろうが、「預金者から保険料をとるなんてなんて銀行だ」という批判が怖かったのだろう。
さらに、国民の間に技術信仰がある。欠陥があることを前提にしてた仕組み(フェール・セーフ)を考えていない。
これらの問題は日本人の意識に根着いているので、なかなか払拭できない。しかし、払拭できないとすれば、形を変えて同じ問題が出てくるだろう。
それにしてもこの本が契機となって銀行の姿勢が変化したのだとすれば、「ペンは剣より強し」を地で行っている。
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事態の本質に迫る著者の分析に感動さえ覚える |
カード犯罪が増えているにも関わらず、銀行も警察も対策を打たずに放置してきた現状を告発する、読み応えのある「取材報告」です。
本書には13件の被害者事例が本書に登場しますが、共通しているのは、銀行は何も補償してくれないこと。また、警察は「あなたはカード(またはカードの磁気情報)を盗まれただけだから、お金の被害届けは出せない」と形式的なことを言って取り合ってくれません。
銀行と警察をたらい回しされる間に「あなたの家族が犯人ではありませんか」などと心無いことばを浴びせられ、被害者は心の傷まで負ってしまいます。
欧米諸国がカード犯罪に1980年代から取り組んでいるのに、日本では1988年に銀行業界が「猛烈な反対」で立法化の検討をつぶしてしまいました。
一方、犯罪者側の技術の進歩は目覚しく、「カードと暗証番号によるセキュリティ」は崩壊しているといってもいいでしょう。
著者は、今まで様々な事故と安全対策の歴史を見てきた経験から断言します。「企業は経営が財政的に厳しくなってくると、失敗の隠蔽や欠陥商品の改修の後まわしなどを密かに行い、安全対策を安上がりで済ませようとする傾向が強くなる」と。
カード犯罪に対する銀行の姿勢も同様と断罪します。
預金者をないがしろにする銀行の姿勢を告発する本書を読んでいると、「そうだ、そうだ!」と言いたくなる箇所がたくさんあります。被害者の窮状が胸に迫り、安全社会構築の本質に迫る著者の分析に感動さえ覚えました。
この取材報告の第一報を『文藝春秋』04年8月号に掲載してから半年あまりで、銀行は次々に対策を発表し、被害補償についても前向きな発言をするようになりました。
本書はカード社会の安全性を再構築するきっかけとなったレポートとして「古典」や「伝説」になるかもしれません。
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海外から一言 もっとも世の中を動かした本だが… |
読んだすぐあとから警察がゴルフ場のスキミング団、検挙や銀行のキャッシュカード被害者救済対応などあたふたとした動きが…。これほど短期で世に影響を与えた本はあまり例を見ない気がする。
既に書評も多いので視点を変えて、海外に住む立場から一言。知り合いの外人にこの本の内容を話すと異口同音に「え、3000万円取られても銀行も警察も何もしない…。そんなこと絶対あり得ない!」いわゆる先進国や中進国であればこの手の犯罪の警察や銀行の対応はとっくに確立している。だから海外の常識では、そんな馬鹿な話がまかりとおるはずがないと誰もが思っている。
またしても日本の常識は海外の非常識を思い知らされた1冊。
悪いのは警察?銀行?それとも何も言わなかった(知らなかった)国民??考えさせられる1冊である。読みやすい本なのでぜひ一読を。
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著者の目の付け所が非常にいい |
あぶないのはキャッシュカード。クレジットカードはさほどあぶなくない。なぜなら保険がかかっているから。
日本では、キャッシュカードの磁気データと暗証番号が一致すればATMから現金が引き出せる。盗難カードでも、スキミングされた偽造カードでも、銀行側に責任がない。最高裁の判決は銀行側有利になされており、従って、銀行はキャッシュカードの安全対策に力を注ぐ必要もない。
他の先進国では、ATMでの現金引出可能な金額の上限を設け(一日当りせいぜい数十万円)、万が一盗難キャッシュカード等で利用者が被害を被った場合には銀行が損害を賠償するのが普通だ。銀行はキャッシュカード盗難に備え保険を掛けている。しかし、日本では裁判所の判例があるので、銀行は保険を掛ける必要がない。リスクは利用者が負う。預金が盗まれているのに、責任はありません、なんていう銀行は先進国では日本だけである。
最近ICカードや生体認証カードが話題になっているが、こういう過大な投資でキャッシュカードの安全対策を図るというのは必ずし得策ではない。法改正を行い、偽造・盗難キャッシュカードによる預金流出は銀行の責任とするだけでいい。高い保険料を払う方がいいか、安全対策を施して保険料を節約した方がいいか、銀行に選ばせればいい。
キャッシュカードをよく使う方はぜひ本書を読まれたい。この本をまとめた著者の功績は大きいと思う。著者の目の付け所が非常にいいので、本書は星5つ。