バイオインフォマティクスの本は、一般ユーザ向けに既存ツールの利用法を解説したものが多い。そんな中でこの本は、自分でツールを作る側になりたい人向けに書かれた希少な本だ。しかもPerlとかで小プログラムを書き散らすのでなく、C++で気合いを入れてアプリケーション開発することを目指している。題材は、DNA、タンパク質の配列・構造、低分子の構造に関する基本的データ解析。必要な生物学知識をまとめた「序章」は、簡単な分子生物学史にもなっている(分子生物学という言葉を誰がいつ作ったかわかる!)。医薬品設計等で特に有用なタンパク質立体構造データと低分子データ(SDF形式)がしっかり扱われているのも特徴。配列データベース検索、分子構造アラインメントプログラムがスクラッチで実装されているのは壮絶。モチーフ検索用正規表現処理も、Perlに走らずBoostを用いて根性でC++で貫徹。新しい動向については参考文献の紹介のみでちょっと残念、続編を期待。あくまで演習書なので適当な教科書と併せて読むとよさそう。分量は250ページ程度だが、二段組で字がぎっしりなので相当の情報量。初心者には少々厳しいかもしれないが、既存ツールでは物足りずこの筋のプロを目指す人には特に有益だろう。STLを含むC++の予備知識は必要。Java派にも役立つ。腕に覚えのある人が自作ソフトを作る踏み台にするのもいいかも。最後の方は特に若干説明が足りない感じもあるが、日本語でくだくだ喋るよりソースコードを読めばわかる、ということか。断片でなく完全なソースコードが載っている。また、ソースコードは一式全部ダウンロードできる。