昨年の八月五日,住民基本台帳法の改正をうけ,いわゆる「住基ネット」が稼動開始した.一言で言えば,名前や年齢などの基本的な情報,ネットワークを使い,自治体間・政府機構間で情報を共有することにより,行政能率を高めようというものである.
…と述べると,何やら良いもののように聞こえるが,必ずしもそうではない.まず必ずしも能率は高まってはいない.逆にコストが増えているとも考え得る.またネットワークによる情報を共有は,それだけ情報漏洩の可能性が高い.住基ネットに登録されているのは生年月日や名前などの「どうでもいい情報」のように思えるかもしれないが,使い方によってはプライバシーを致命的に侵害する.例えば,名簿業者や闇金融に個人情報が出まわるのではないかという指摘がある.住基ネットのセキュリティも不安である.OSのウインドウズはセキュリティホールの存在が再三指摘されているし,管理側の人的要因により個人情報が漏洩する可能性も高い.実際,昨年後半に,福島県岩代町で全町民のデータが盗まれるという事件があった.また,細部の取扱について実務上の混乱も見える.それに本来,住基ネットは個人情報保護とあくまでワンセットの立法だったはずだ.ところが,個人情報保護法案は,こちらもいろいろと問題があったために頓挫してしまった.充分な保護もなされないまま,我々の個人情報が垂れ流されているのが現状なのである.要するに,制度運用のための圧倒的準備不足にも関わらず,見切り発車してしまったというのが真相だろう.業者・政治家・官僚の利権のためにである.
本書は,以上のような住基ネットの問題点を,弁護士・ジャーナリスト・ネットワーク技術の専門家が,やさしく解説している.巻末には50p強の関連資料も網羅されており,非常にお勧め.